椅子が主役の空間作り

前回のブログでは、デンマークの巨匠ハンス・ウェグナーの「職人魂」について触れました。


今回は、「椅子は人が座って初めて完成する」という彼の言葉を肌で感じられるような、椅子へのこだわりが詰まった素敵なカフェを訪れました。


ハンス・ウェグナーの言葉になぞらえながら、椅子がもたらす空間デザインに着目していきたいと思います。



■個性が共鳴する「バラバラの椅子」

店内に一歩足を踏み入れるとまず目に飛び込んできたのは、あえてデザインを統一していないバラバラの椅子たちでした。

つい同じデザインで揃えてしまいがちな椅子ですが、ここでは一脚一脚が異なる表情を持ちながら空間全体で見事に調和しています。

「座ることで完成する」という言葉通り、訪れる人がその日の気分で「自分だけの一脚」を選べる楽しさがここにはありました。まさにインテリアの醍醐味であると感じます。


そんな個性溢れる椅子の中から、特に心惹かれた3脚をご紹介します。

(左)遊び心ある「本入れ」付きの椅子

背もたれの後ろに本や雑誌を収納できるラックが付いた椅子です。手仕事のぬくもりを感じる「クラフト感」と、時を経て刻まれた「アンティーク感」が絶妙に混ざり合っています。物語を感じさせるデザインが空間に独特の深みを与えていました。

(中央)柔らかな質感の布地椅子

落ち着いた色合いのファブリックが張られた椅子。木のフレームの硬質さと、ファブリックの優しい手触りのコントラストが心地よく、座るだけでゆったりとした時間をもたらしてくれます。

(右)造形美を感じるウィンザーチェア

背もたれのスポークが美しく、木の曲線が体に馴染むデザイン。機能性と美しさを兼ね備えた、存在感のある一脚です。


統一感というルールに縛られないことで、むしろ一つ一つの個性が際立ち、その場所だけの「味」が生まれていました。



そして、この個性豊かな椅子たちを受け止める内装デザインも秀逸でした。

(左)入口に置かれたアンティークのベンチとグリーンの配置。
さりげない演出の中に、家づくりの参考にもなる「おもてなしの建築」を感じます。


(中央)足元はクールで無骨なモルタル床。
一方、天井を見上げると力強い黒の梁が現れ、剥き出しの配線やシンプルな照明が空間にほどよいラフさと味わいを加えていました。


(右)空間のシンボルとなっている「薪ストーブ」。 パチパチと薪がはぜる音と、ゆらめく炎を眺めながら過ごす時間は、まさに至福のひとときです。


この「無骨な素材」と「木の温もり」の絶妙な掛け合わせが、椅子というインテリアをより一層引き立てています。



今回ご紹介したカフェのように、バラバラの個性を持つ椅子たちが主役として輝けるのは、建築の軸がしっかりと、そしてラフに整えられているからこそ。

「建築」と「インテリア」が響き合う住まいを、これからも追求していきたいと思います。